Museu Frederic
Mares i Deulovol, Barcelona
ここのぞっとする感覚はどこから来るのでしょうか。
フレデリック・マレス美術館から外へ出たとき、それは多くのキリスト磔刑像、聖母マリア像などのロマネスク像から発するこの世ならざる神秘的で崇高な気配に圧倒されたからだと気づきました。
ご承知のように、イスパニア・ロマネスク美術には新約聖書から受ける「愛の投射」的な作品はほとんどありません。
この美術館のおびただしい数の像たちは、峻厳な贖罪の神の死にゆく姿に加え、慈愛の聖母子像の類ではなく来たるべき最愛の神の子の悲しい運命を洞察し耐える母の悲哀の像なのです。
ここではこの美術館に蔵された聖母子像を三つだけ載せましょう:
最後の聖母子像だけが13世紀のもので、解説には「Curiosa imagen de la Virgen」(聖母の変わった像)と記されています。
別のアングルからの写真です↓
私の見解ではこの木像はおそらく13世紀初頭~中頃の作品で、彫りはロマネスク時代の手法を色濃く残しており(直線的なざっくりとしたbisel斜彫手法)、
ただ容貌だけが新時代であるゴシックの到来を思わせる微かな優しさが写実の匂いを発散させています。
バルセロナとその近郊にはヨーロッパでも最も秀逸なロマネスク美術の分野―絵画(壁画と板絵)-を国立カタルーニャ美術館MNACで観ることができるのは言うまでもありませんが、
通として訪れるべきは、この美術館とバルセロナの北方(Tibidabo山の向こう側)のSant Cugat de les Valles修道院の回廊でしょうね。
後者はバルセロナ広場の地下から電車で20分ぐらい北に行った郊外の同名の駅で降りて、西の方に15分ぐらい歩くと着きます、
新しく開けた住宅地で静かなところで、ロマネスク様式の回廊は圧巻です。
(勝峰昭執筆2017.07.20)
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この美術館から徒歩圏内の市内に残るロマネスク様式の教会です⤵︎
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FIN
(次回2022.02.02更新予定)
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